サントスの日記帳

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zoom RSS 1946年夏、新憲法を仕上げた政治家達

<<   作成日時 : 2017/05/11 05:42   >>

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 5月3日、NHKの『憲法70年 “平和国家”はこうして生まれた』は中々見応えの有る番組だった。その中で取り上げられた帝国憲法改正小委員会の議事録・・・、便利なもので検索するとすぐに出てくる。

  その中の9条に関係する部分である。

 此処で議論となったのは戦争の放棄と戦力不保持を明文化する前に、何らかの宣言を入れるか否かと、戦争を放棄するのか否認するのかという言葉の問題である。

帝国憲法改正小委員会
 
昭和二十一年七月二十七日(土曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 芦田  均君
     廿日出ひろし君    江藤 夏雄君
      犬養  健君    吉田  安君
      鈴木 義男君    森戸 辰男君
      林  平馬君    大島 多藏君
      笠井 重治君    北 れい吉君
      高橋 泰雄君    原 夫次郎君
      西尾 末廣君
 出席政府委員
          法制局次長 佐藤 達夫君

※先ず口火を切ったのは、社会党の鈴木である。


「唯戦争ヲシナイ、軍備ヲ皆棄テルト云フコトハ一寸泣言ノヤウナ消極的ナ印象ヲ与ヘルカラ、先ヅ平和ヲ愛好スルノダト云フコトヲ宣言シテ置イテ、其ノ次ニ此ノ条文ヲ入レヨウヂヤナイカ、サウ云フコトヲ申出タ趣旨ナノデアリマス」

 「泣き言のよう」との表現が面白い。敗戦国だから相手の要求を唯々諾々と飲むのでは何とも情けないと言う気持ちが溢れている。

 更に、放棄とするか拒否とするかの議論について「否認」を訴える自由党の意見を代弁する芦田から議論が始まる・・・

委員長芦田(自由党) サウ云フ風ニモ見エルシ、又読ミヤウニ依ツテハ「否認」ト云フコトガ強イト思フノデス、戦ヲ仕掛ケテ来タガ、俺ハ戦ガ厭ヤダト言ツテ、鉄砲ヲ捨テテゴロゴロ、逃ゲテ行クノモ「抛棄」デスネ

犬養委員(進歩党) サウ云フ風ニモ取レルガ、「否認」ト云フコトハ、危イカラ止メヨウヂヤナイカト云フ風ニモ取レルト思フ

委員長芦田 ソレハ読ミヤウデ強クモ弱クモ取レマス

大島委員(進歩党)「抛棄」ト云フト、戦争ヲヤツテ居ル時トカ、何カ権利ヲ捨テルト云フ時ニハ宜イガ、全然何モヤツテ居ナイ時ニ「抛棄」ト云フノハヲカシイ、持ツテ居ルモノヲ捨テルトカ、又ハ実際従事シテ居ルコトヲ止メルト云フ時ハ、「抛棄」ト云フ言葉ガ適当デアリマセウガ、実際ヤツテ居ナイ戦争ヲ「抛棄」スルト云フノハ、文字ノ使ヒ方ガヲカシイト思フ

原委員(進歩党) ソレハサウデハナイノデス、第二項デ、戦争権ト云フモノハ国家ニアル

鈴木委員 戦争権ノ抛棄デスカラネ

大島委員 戦争ヲ権利ト見ル訳デスネ

鈴木委員 権力ノ発動デスカラネ、唯「抛棄」ト云フ言葉ハ、漢字制限会ノ方デハ、ヤハリ「否認」ヨリ「放ツ」ト書イタ「放棄」ト直スヤウデスガ……

廿日出(自由党)委員 事実ニ於テハ、終ヒノ所ニアルデハナイデスカ、国ノ交戦権ハ之ヲ認メナイト云フコトカ……

鈴木委員 交戦権ト言ツテモ同ジヤウナモノデハナイト思ヒマスガ……

廿日出委員 イヤ、ソレハサウダガ、認メナイト云フカラ「否認」トナル

鈴木委員 「否認」ト云フコトヲ使フカドウカ、ソレト漢字制限ノ字ヲドウ使フカト云フ問題ガアル、所ガ漢字制限会ノ出シテ居ル所ヲ見ルト、ドウモ感心シテ居ナイカラ、原案ノ方ガ宜イ、ダカラ「抛棄」モ「否認」トスルトピツタリ来ナイ、「抛棄」ナラバ適切ナ言葉デスカラ、将来学校ヤ何カデ子供ニ教ヘル時ハ、仮名デ「ホウキ」ト云フ風ニ教ヘル、サウシテ憲法デハヤハリ斯ウ云フ字ヲ使ツテ居ルト云フコトヲ是カラヤル外ナイト思フ

委員長芦田 仮名デ書イテハ子供ハ掃キ掃除ノ「箒」ト間違ヘル

犬養委員 漢字制限デ斯ウ云フ漢字ハイケナイト云フコトハ、誰ガ決メタカ知ラナイガ……

鈴木委員 「抛棄」ト云フコトハ棄テタクナイ

林(共同民主党)委員 「否認」ト云フヨリモ、「抛棄」ト云フ方ガピツタリスルヤウニ思フ、戦争ヲスルト云フ、サウ云フ手段ヲ執ラナイ、永久ニ棄テルノダト云フコトデアリ、戦争権ヲ我々ハ棄テテシマツタノダト云フコトダカラ、ドウモ「否認」ト「抛棄」トハ似テ非ナルモノガアル、距離ガアルト思フ、ダカラヤハリ「抛棄」ト云フ文字ガイケナイナラ別ニ考ヘテ、「ホウキ」ト仮名デ書クト云フノデハナク、「抛」ノ字ニ意味ガアルカラ、「ホウ棄」ト書イテモヤハリ此ノ字ヲ生カスコトデセウネ

犬養委員 私は敢テ固守致シマセヌガ、サツキノ第九条ノ一等初メニ「日本國は、永遠の國是として、戰爭の抛棄を宣言する。即ち國權の發動たる戰爭」云々ト云フヤウナコトヲ入レタラ、少シ強クナリハシナイデスカ、此ノ侭ダト、何ダカドウモ到頭イケナクナツチヤツタカラ戦争ハ止メヨウト云フ風ニ聞エテナラヌデス、ドウモサウ取レル、併シ是ハ国是ダ

・・・・・以上引用

 議論は条文の言い回しとして、どちらの言葉を使うかと云う細かな部分だが、全体としてどちらの語句を使った方がより確実に意志が伝わるかを熟慮している様子が見て取れる。

 そして、現行憲法に有る「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し・・・」の部分に議論は進む。

 委員長の芦田は叩き台として次の一文をしめす。

「会議ヲ開キマス、本日ハ昨日ニ引続イテ第二章ノ修正ヲ御相談致シマス、昨日ハ色々第九条ノ修正案ニ付テ意見ガ出マシタガ、今朝来早ク此ノ席ニ来ラレタ委員諸君ト相談ヲシタ結果、斯ウ云フ文字ニシタラドウカト云フ試案ガ一ツ出テ居ルノデスガ、ソレヲ御協議ヲ願ヒマス、便宜ノ為に私一寸読ミマス、此ノ案ハ第二項ノ現在ノ字句ガ余リ気ニ入ラナイカラ、ソレヲ修正スルト云フ趣意ヲ兼ネテ斯ウ云フ文字ニシタラドウカ、「日本國民は、正義と秩序とを基調とする國際平和を誠實に希求し、陸海空軍その他の戰力を保持せず。國の交戰權を否認することを聲明す。」ト第一項ニ書イテ、ソレカラ現在ノ第一項ヲ第二項ニ持ツテ来テ「前掲の目的を達するため、」、サウシテ第一項
ノ「國權 の發動 たる戰爭」云々ト斯ウ云フヤウニシタラドウカト云フ試案ナノデス、サウシテ第二項ノ「他國との間の紛爭の解決の手段」ト云フ文句ガ、如何ニモ持ツテ廻ツテダラダラシテ居ルカラ、之ヲ「國際紛爭を解決する手段」ト直シタラドウカ、ソレカラ「否認」ニスルカ、「抛棄」ニスルカト云フコトニ付テ、昨日大分意見ガアツタヤウデスガ、「否認」ト云フノハ意見ガ少数ノヤウニ見エマシタカラ、戦争ノ「放棄」トスルガ、其ノ「ホウ」ハ漢字制限ノ意見ヲ入レテ「放」ト云フ字ニシタラドウカト云フ意見ガ出テ居ルノデス、手扁ノ難カシイ字ヲ止メテ……」
 
 さて、引用はこのくらいにしておく。この後、9条1項の始めの部分の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」(現行憲法)に繋がる議論が進んで行くのだが、その討論は、政党の利害を超えて、何とかこの敗戦国日本が国際社会に復帰し、そのことのみならず、この憲法を持つことによって世界平和をリードしてゆく地位を得たいという切望に溢れたものとなっている。

 残念な事に今の政治家に、こんな信念や情熱が有るのか疑問であるが・・・

 そして、出来上がった9条・・・、2項の冒頭に「前項の目的を達するため、」と言う「謎」の一文が付いたが、少なくとも、不戦の誓いだけはなく、「侵略戦争」・「紛争時の威嚇を含めた使用」に資する戦力の不保持、と言う先進性のある内容となった。

 最後に芦田の本会議報告の9条の部分で、その思いが籠もった部分を示す。


・・・第九条ノ規定ハ我ガ国ガ好戦国デアルトノ世界ノ疑惑ヲ除ク消極的効果ト、国際連合自身モ理想トシテ掲ゲテ居ル所ノ、戦争ハ国際平和団体ニ対スル犯罪デアルトノ精神ヲ、我ガ国ガ率先シテ実現スルト云フ積極的効果ガアリ、現在ノ我ガ国ハ未ダ十分ナ発言権ヲ持ツテ、此ノ後ノ理想ヲ主張シ得ル段階ニハ達シテ居ナイケレドモ、必ズヤ何時ノ日ニカ世界ノ支持ヲ受ケルデアラウト云フ答弁デアリマシタ、委員会ニ於テハ更ニ一歩ヲ進メテ、単ニ我ガ国ガ戦争ヲ否認スルト云フ一方的行為ノミヲ以テハ、地球表面ヨリ戦争ヲ絶滅スルコトガ出来ナイ、今日成立シテ居ル国際連合デサヘモ、其ノ組織ハ戦勝国ノ平和維持ニ偏重シタ機構デアツテ、今尚ホ敵味方ノ観念ニ支配サレテ居ル状況デアルカラ、我ガ国トシテハ、更ニ進ンデ四海同胞ノ思想ニ依ル普遍的国際連合ノ建設ニ邁進スベキデアルトノ意見ガ表示セラレ、此ノ点ニ関スル政府ノ努力ニ付テ注意ヲ喚起シタノデアリマシタ

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