兵士を使い捨て、それでも英霊と言う欺瞞「日本軍兵士」(吉田裕:中公新書)

 最近、「本当は強かった日本軍」とか「日本軍は最強だった」「世界最強だった日本海軍」とか、何を根拠に・・・、と言う、最強伝説が散見される。しかし、本書を読むと、やっぱり大日本帝国は負けるべくして負けたことがよく分かる。

 本書は、日中戦争から終戦に至る「帝国の戦争」を、軍隊の歴史・・・「戦史」として正面から捉えた歴史書である。

 組み立ては、絶望的抗戦期の実態を描く「死に行く兵士たち」、「身体から見た戦争」、「無残な死、その歴史的背景」の三部構成としている。

 兵士はどのように死んでいったのか、終戦に近づくにつれ、戦病死や餓死が増える。戦病死と言っても栄養状態の不良から悪化するものが多く、それは広義の餓死と言えるものであった。また、精神的・肉体的に衰弱して自殺をするものも多く、更に、制海権を握られている地域では戦地に着く前に船が沈められ、海没死する者も急激に増える。
 また、戦死と言っても、爆弾を抱えて戦車に自爆攻撃を仕掛けたり(肉攻)、折角飛行技術を習得しながら「特攻」などという全く不条理な死を選択させられた人間も居る。
 「消耗品」と化し、打ち捨てられ、人間の尊厳も顧みられず死んでゆく兵士の集団をして、何が英霊、何が軍神であろうか?

 本書では、兵士だけでなく、その装備にもフォーカスを当てる。最強と言われながら、その実、体重に匹敵するくらいの重い装備を引きずりながら、履く靴と言えばすぐに縫い糸が切れて口を開けよろよろ歩く兵士。白兵戦といえば相手の軽機関銃に対してボルトアクションの小銃と先端に付けた銃剣が主要装備。疲れた兵士は覚せい剤で偽りの士気を高める。また、工兵に至っては、敵はブルドーザーやユンボを用いるのに日本兵は「もっこ担ぎ」。通信の主体は有線の通信機で、断線すれば部隊の連携など有った話では無い。

 更に、この本では兵士を無残な死に追いやった歴史的背景を明らかにする。その原因は、何といっても大日本帝国憲法の決定的な欠陥に代表される、権力の二重構造による無責任体制と読み取ることが出来る。
 即ち、統帥権が天皇にあり政治から切り離されている無責任体制。内閣と枢密院の二重権力体制。選挙で選ばれた衆議院と身分制度に裏打ちされた貴族院の議会の二重支配。大本営における参謀本部(陸)と軍令部(海)の分断支配等々・・・、結局、その無責任体制は、決断や収拾の遅れとなって、多くの兵士を「無駄死に」させて行く。

 いったい、帝国の軍隊とは何だったのか?ただ、一つ言えるのは、全てに於いて、ダメな集団でしか無かったと結論付けなければ、必ず同じ過ちを繰り返すという事だ。

 今また、この国の軍隊に準ずる組織は、限りなく軍隊に近づこうとしている。立憲主義が不完全であった為に軍隊の暴走を許した戦前・戦中の轍を踏みたくなければ、常にこの実力組織は暴走していないか・・?、即ち、憲法に反した行動や装備となっていないか?その違憲性が問われる存在で無ければ行けないという事だ。

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