左翼の愛した健さん「日本侠客伝―昇り龍―」

よく健さんのやくざ映画は、右からも左からも支持され、特に学生運動が盛んだった時代、活動を行っていた人たちに多くのファンが居たと言われています。その理由は、渡世のしがらみの中、我慢にがまんを重ねた健さんが、もう辛抱出来ずに立ち上がる姿を、自らに投影したからだと言われています。
それでは、健さんのやくざ映画のストーリーの中で、左翼的な活動を描いたものは無いのか?記憶を辿ってみました。

東映と云う会社は、その歴史の中で、扱わない題材は無いと言って良いほど、沢山の分野の映画を作って来ました。
任侠映画や実録やくざ映画、「二百三高地」や「あゝ同期の桜」等に代表される戦記物、右太衛門さん・千恵蔵さんを頂点とした絢爛たる時代劇、そして千葉真一さんに代表されるアクションもの、金融腐蝕列島のような経済小説・・・、時をかける少女の様なアイドルもの・・・、東映マンガ祭等のアニメ映画、日活の様に「全てをこれに・・・」では有りませんでしたがポルノ映画も作ってきまいた。ただ、東宝が得意とした純文学路線の映画と巨大怪獣映画だけは撮っていなかったような気がします。時に、売り場の閉鎖や縮小は有りましたが、まさに映画の百貨店でした。

そんな中、やくざ映画の中でも反権力・・・と云うより、反大資本を描いた映画がありました。それが「日本侠客伝―昇り龍―」です。

監督は、多くのやくざ映画を手掛けた山下耕作さんです。この映画、何よりも俳優陣が凄い!主役は勿論健さん・・・、そして、彼に協力するのが鶴田浩二さん、黒幕的実力者に片岡千恵蔵さん、そして健さんと恋の鞘当をするのが伊吹吾郎さん、そして珍しく悪役では無い遠藤辰雄さん等・・・、一方女優陣は、健さんの女房に仲村玉緒さん、健さんに想いを寄せる女彫師に藤純子さん、そして北九州きっての女大親分に荒木道子さんを配しています。
この映画・・・、やくざ映画の両巨頭は勿論素晴らしいのですが、三人の女優さんの「女っぷり」が良い!やくざ映画の大看板・・・藤純子さんは勿論、大らかでキップの良い奥さん役の玉緒さん・・・、そして、何と言っても豪快な女親分を演じる荒木道子さん!あの荒木さんのやくざ役が素晴らしいのです。

さて、この映画・・・、何処が左翼の人達に受けたのか・・・、舞台は北九州の港湾労働者の世界。山口組の前身もそうだった様に、その世界を束ねて行くの、やっぱり「そのスジ」人達です。機械化によって仕事を追われる港湾労働者の不満を、資本家の側に立って押さえつける力と、転業支援等の権利を勝ち取って行こうする組合派の対立・・・、まさに、舞台は労働争議です。健さんは、港湾・荷役を束ねる大企業とそれ支える一方のやくざ達と決然と対決します。それを力で支える鶴田浩二さんと荒木道子さん。勿論、最後には「殴り込み」となるのですが、先ずは遠藤辰雄さん演じる活動家の支援で大衆動員を図ります。署名とストライキで対抗しようとする健さん・・・、何と、健さんが集会(素人ののど自慢の体を装った集会ですが・・・)で、演説までしようとするのです。・・・勿論、結果は「不器用な」ことになるのですが・・・
まあ、確かに話の本筋は、健さんと藤純子さん・・・、中村玉緒さんの三角関係なのですが、やっぱり1970年という時代の空気・・・、これが反映された映画だった様な気がします。
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